沖潤子 「よれつれもつれ」

2022/10/15 Sat - 2022/11/19 Sat

KOSAKU KANECHIKAでは、2022年10月15日から11月19日まで、沖潤子展「よれつれもつれ」を開催いたします。
沖潤子は、古い布や道具が経てきた時間、またその物語の積み重なりに、刺繍と彼女自身の時間の堆積を刻み込み、紡ぎ上げることで、新たな生と偶然性を孕んだ作品を発表してきました。山口県立萩美術館・浦上記念館で2020年から1年間展示された個展「anthology」では、全国から寄せられた7,000個あまりの糸巻きを用い、新たに紡ぎ生まれたインスタレーション作品を展示。その後KOSAKU KANECHIKAで開催した個展「よびつぎ」では、「anthology」の出展作品に手を入れ直し、展示しました。
そこには新旧の時間が抱擁し合っている、そう沖は言います。存在してきたすべてのもの、過ぎ去ったが確かにあった時間。いくつもの時間の層を重ねることで、違う風景を見つけるということが沖の制作の核にあります。

ノスタルジア
2022
Cotton, hemp, silk, wool, bandage, iron
h.111.5 x w.140.3 x d.11.5 cm
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本展に際し、沖は以下のステートメントを寄せています。

生まれてくる子の名前を考えている人がいて、自分の制作に名前をつけてみようと思った。
私の針目はいつも、縺(もつ)れ、ひき攣(つ)れ、縒(よ)れている。
よれつれもつれ。暗号みたいな言葉が降りてきた。
人間の動作で云えば少しも歓迎されない様子をさすが
くりかえし口にしていると作品にこめた時間が昇華するような気がしてくる。
無手勝流の針目を今日からこう呼ぶことにした。

Mother
2022
Cotton, hemp, silk, bandage, wood, beeswax
h.100.2 x w.70.3 x d.8.2 cm
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summer dress
2022
Cotton, hemp, silk, bandage, wood, beeswax
h.100.2 x w.60.3 x d.7.3 cm
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「よれつれもつれ」(縒れ攣れ縺れ)。制作をしていると必ずと言っていいほど糸が縺れる。しかしほぐしたりはせずにそのまま縫いとめていると、縺れを受け入れることが制作を進める上で大切だとわかる。
糸を強く引いて攣れた布は織り方や薄さ・艶によって攣れの表情が異なり、年月がきざまれた皺のように見えてくる。そして夥しく刺された針目で縒れて陰影があらわれた布は、筋肉がつき意志を持ってうごきだす。

甘い生活
2022
Cotton, hemp, silk, bandage
h.55.0 x w.35.5 x d.9.8 cm
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シクラメン1
2022
Cotton, hemp, silk, bandage
h.45.2 x w.40.3 x d.9.7 cm
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シクラメン2
2022
Cotton, hemp, silk, bandage
h.45.2 x w.40.3 x d.9.7 cm
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このように、通常は好ましく思われないこれらの糸の様子は、沖の制作過程をよく表すものであるだけでなく、彼女の作品の独創性の源泉となっています。さらに音として口をついて出てきたというこの言葉をきっかけに、あらためて作品の「縒れ攣れ縺れ」に注目すると、作品の上に人体が見えてきたといいます。この言葉との出会いにより、期せずして制作の新たな道が見えたのです。

マーガレット
2022
Cotton, silk, bandage
h.50.4 x w.50.4 x d.7.0 cm
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前兆
2022
Cotton, hemp, silk
h.65.2 x w.60.6 x d.7.6 cm
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沖はまた、展覧会で多くの人に作品を見てもらうたびに生まれ直す機会を得たと感じてきたと語っています。「名前をつけて、またそこから始めよう。そして根本に自由があることを確認したい」。すでにあった多様なものたち、過ぎ去った時間を尊重し受け入れ、無数の針を刺すことによって混じり合っていく。そうするには異なるものへ自身を完全に明け渡すことが必要です。それが自由であり、だからこそ沖の作品は生の力に満ち鑑賞者を圧倒するのかもしれません。
本展では新作11点を展示します。この機会に是非ご高覧ください。

水鏡1
2022
Cotton, hemp, silk, bandage
h.41.5 x w.32.5 x d.4.6 cm
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水鏡2
2022
Cotton, hemp, silk, bandage
h.41.3 x w.32.3 x d.4.6 cm
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GOLD
2022
Cotton, hemp, wood
h.63.8 x w.30.0 x d.8.5 cm
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1963年浦和市生まれ。現在は鎌倉市を拠点に制作しています。主な個展に「Recycle」(ARTS & SCIENCE 青山、東京、2009)、「gris gris」(DEE’S HALL、東京、2016)、「月と蛹」(資生堂ギャラリー、東京、2017)、「JUNKO OKI」(2017)/「Truly Indispensable」(Office Baroque、ブリュッセル、2019)、「anthology」(山口県立萩美術館・浦上記念館、2020)が、主なグループ展に「コレクション展1 Nous ぬう」(金沢21世紀美術館、石川、2016)、「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018」(文翔館、山形、2018)、「現在地:未来の地図を描くために[2]」(金沢21世紀美術館、石川、2019)などがあります。2014年には、自身の撮影による作品集「PUNK」(文藝春秋)を刊行しました。作品は金沢21世紀美術館に収蔵されています。KOSAKU KANECHIKAでは2021年に引き続き5度目の展覧会となります。9月17日より2023年1月9日まで、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で個展「沖潤子 さらけでるもの」を開催中です。

Photo by Yasushi Ichikawa