舘鼻則孝 「Descending Painting」

2021/9/4 Sat - 2021/10/9 Sat

KOSAKU KANECHIKAでは、2021年9月4日から10月9日まで、舘鼻則孝展「Descending Painting」を開催いたします。
2018年に開催した展覧会「Beyond the Vanishing Point」以降、舘鼻は消失点、また境界線という価値観を通して、此岸と対岸の双方の視点を結び付ける要素の探究を続けてきました。そして、2020年に開催した展覧会「Dual Dialogue」では、《Duality Painting》として一対の視点を1枚の絵画の中に共存させました。

Descending Painting
2021
Acrylic, wood, stainless steel
h.160.0 x w.120.0 x d.13.5 cm
Descending Painting
2021
Acrylic, wood, stainless steel
h.160.0 x w.120.0 x d.13.5 cm
Descending Painting
2021
Acrylic, wood, stainless steel
h.160.0 x w.120.0 x d.13.5 cm
Descending Painting
2021
Acrylic, wood, stainless steel
h.79.7 x w.70.0 x d.12.5 cm
Descending Painting
2021
Acrylic, wood, stainless steel
h.79.7 x w.70.0 x d.12.8 cm
Descending Painting
2021
Acrylic, wood, stainless steel
h.79.7 x w.70.0 x d.12.8 cm

本展で公開される新たな《Descending Painting》は、幾層にも重なるレイヤー状の表現が作品に用いられています。それは単に立体的な絵画であるというフォーマットの探究以上に、舘鼻が向き合う「視点」への強い関心が表れています。そのような探究は、江戸時代の洛中洛外図屏風に代表されるような俯瞰図に対しての舘鼻独自の捉え方にも通じています。それは、俯瞰図における画面外に定められた視点(消失点)を表現するために、画面内の多層化されたレイヤーを用いて逆遠近法における表裏一対の空間を表現したという発想であり、多層化したガラスを用いた新作《Descending Layer》にも手法として応用されています。

Descending Painting
2021
Acrylic on panel
170.0 x 450.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
155.0 x 120.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
155.0 x 120.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
49.0 x 49.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
72.2 x 72.2 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
45.5 x 38.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
45.5 x 38.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
57.0 x 30.0 cm
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
57.0 x 30.0 cm
Descending Sculpture
2021
Acrylic on panel
h.140.5 x w.153.0 x d.8.3 cm

舘鼻は本展に際し、以下のようなステートメントを寄せています。

 

作品を通して自分と向き合うための視点の探究を行なってきた。
生と死、記憶と現実。そして、自分と他人。
対岸にある新たな価値観が一対の視点を結び付けるだろう。

 

本展のタイトルにもなっているこの《Descending Painting》シリーズは、仏教において、臨終を迎える際に、阿弥陀如来と菩薩が雲に乗り迎えに現れる場面を描いた「来迎図」に着想を得て制作されたものです。舘鼻の描く来迎図には、阿弥陀如来と菩薩が描かれる代わりに雷が描かれています。雷は、神道における依代に「神のみたまが依り憑く」場面をモチーフとして表しているとも言えます。「生と死」や、その「境界線」という視点から日本独自の死生観を表現する舘鼻の作品上には、仏教と神道における双方の価値観が共存する「神仏習合」と呼ばれる習合思想が示されているのです。

Descending Layer
2021
Acrylic, glass, mirror, stainless steel, steel
h.60.0 x w.60.0 x d.5.4 cm
Descending Layer
2021
Acrylic, glass, mirror, stainless steel, steel
h.60.0 x w.60.0 x d.5.4 cm
Descending Layer
2021
Acrylic, glass, mirror, stainless steel, steel
h.60.0 x w.60.0 x d.5.4 cm

日本古来の文化的に価値の高い部分と現代の要素を組み合わせることで、新たな視点と世界観を提示すること、それが今の時代を生きる人に寄り添うことができるかどうか。それが常に舘鼻の活動の核にあります。
いちど立ち止まり、これまでとは違う視点で見ることが必要な時代に私たちは生きています。そしてもう一度歩き出すために、舘鼻の作品はどのようなヒントを与えてくれるのでしょうか。本展では新作を35点展示する予定です。この機会に是非ご高覧ください。

Descending Painting
2021
Acrylic on panel
250.0 x 42.3 cm
Baby Heel-less Shoes
2021
Dyed cowhide, pig suede, coated glass crystal, metal fastener
h.27.2 x w.7.5 x d.12.5 cm each
Baby Heel-less Shoes
2021
Dyed cowhide, pig suede, coated glass crystal, metal fastener
h.17.6 x w.6.8 x d.12.0 cm each
Baby Heel-less Shoes
2021
Dyed cowhide, pig suede, coated glass crystal, metal fastener
h.27.2 x w.7.5 x d.12.5 cm each
Heel-less Shoes
2021
Dyed cowhide, pig suede, coated glass crystal, metal fastener
h.45.0 x w.10.6 x d.22.3 cm each
Heel-less Shoes
2021
Dyed cowhide, pig suede, coated glass crystal, metal fastener
h.54.0 x w.11.0 x d.22.0 cm each

舘鼻則孝(たてはな のりたか)

1985年東京生まれ。 歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。 シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で、幼少期から手でものをつくることを覚える。 2010年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。 遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。 「イメージメーカー展」(21_21 DESIGN SIGHT、2014)、「Future Beauty」(東京都現代美術館 ほか国際巡回、2012)、個展「呪力の美学」(岡本太郎記念館、2016)、個展「It’s always the others who die」(POLA Museum Annex、2019)、個展「NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty」(ポートランド日本庭園、2019)等の他、ニューヨーク、パリ、ベルギーなど世界各地で作品を発表。 また 2016年3月にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催するなど、幅広い活動を展開している。 作品はメトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵されている。 東京都が主宰する「江戸東京きらりプロジェクト」の一環として企画された、東京の伝統産業に焦点を当てたオンライン展覧会「江戸東京リシンク」(和敬塾 旧細川侯爵邸、2021)の展覧会ディレクターを務めた。

Photo by GION