KOSAKU KANECHIKAでは、2022年3月5日から4月9日まで、Dan McCarthyと桑田卓郎の2人展「Dear Friend」を開催いたします。
国際的な現代アートシーンにおいて、セラミック作品の潮流は2014年頃にピークを迎えたと言われています。多くのアーティストたちがセラミックを制作に取り入れ、また以前からセラミックを専門としてきたアーティストが再発見されるという流れがありました。2014年頃以降もその活発さは保たれ、セラミックは現代彫刻においてひとつの分野として確立されたと言えます。
その潮流の初期の頃から、Dan McCarthyと桑田卓郎の作品はそれぞれ、いわばアイコン的な存在として常に注目を浴びてきました。まずそのビビッドな色合い、プレイフルな造形 - McCarthyの顔のモチーフの「Facepot」、桑田の大胆な釉薬表現の梅花皮(かいらぎ)の茶碗 - が鑑賞者を惹きつけます。そして作品をよく見ると、そのキャッチーさを支えている技術的な洗練に気づきます。釉薬の探索、焼き方、金継や石爆(いしはぜ)といった陶芸の技術の応用など。ただ、このふたりのアーティストに共通するのは、その技術自体を追求するのではなく、素材の特徴を生かし、そして尊重しながらも、別のカルチャーや時代性から客観的にとらえる視点を持つことによって、セラミックという媒体をより広い文脈に位置づけ、新しい領域を切り拓いているということです。火を使い、焼いてみないと結果がわからないという、セラミックが持つある種原初的な過程を、敬意を持ちながら楽しんでいる彼らの作品は、自由について多くの示唆を与えてくれます。
今回日本での発表が初めてとなるMcCarthyは、本展に以下のステートメントを寄せています。
私は直感から⼊る。
器は何かを⼊れる容器で、これから⼊るかもしれない何かの形を取る。
器とはどういった物で、何が⼊るのか。制作は質問から始まる。
⾃分の⼿で作られた器は、私の考えなしに可能性に問いかける。
湿った陶⼟が乾き、釉薬を覆い、⽯のように固まる。
作ることの⾃由が可能性を描写する。
制作というものは、⾏動のみを求める。
作品は、初めて⼀体になったときに完成する。
完成した器は、誰かのための何かを封じ込み、 共有の経験となる。
未来を動かし指し⽰す、 ⾃分と相⼿に⾃由を与えられる作品を作りたい。
Dan McCarthy
Jan. 18, 2022
本展は、McCarthyの作品に自分の作品と通じるところを見出す一方で、まったく違うアプローチをしていると感じていたという桑田の発案から実現しました。自然や素材といったものと対話することによって制作をするMcCarthyと桑田は、お互いの作品をそれぞれ理解してきたことは想像ができます。今回展覧会においてフィジカルに出会うことで、作品同士はより親密な - 恐らく言葉よりももっと繊細に伝え合う言語によって - 対話をはじめます。その出会いに鑑賞者は立ち合い、そして時には媒介となることでしょう。桑田はこの展覧会を、これからの自身の制作の方向性を掘り下げる原点となるだろうと予想しています。本展は、現代アートにおけるセラミックの潮流にとっても、意義深いものとなるでしょう。McCarthyのペインティングを含む15点と桑田の15点を展示する本展の展示空間は、建築家の石田建太朗によって設計されます。この機会に是非ご高覧ください。