EXHIBITION
舘鼻則孝
「Dual Dialogue」
2020/9/5 Sat - 10/10 Sat
本展「Dual Dialogue」は、舘鼻のKOSAKU KANECHIKAでの4度目の個展となります。スペースの柿落としとなった2017年の「CAMELLIA FIELDS」では、私的記憶の回想から始まり、故郷である鎌倉の原風景と日本独自の死生観を重ね合わせました。2018年の「Beyond the Vanishing Point」では、西洋絵画の透視図法における消失点に擬えて、一対の要素とその境界線を俯瞰した視点から描きました。2019年の「WOODCUTS」では、60年代アメリカのミニマリズムにおける概念であるスペシフィック・オブジェクトからの系譜として、五本の直線のみで成り立つ源氏香の図という古典をモチーフに、新たなフォームを構築して彫刻と絵画の関係性について探究しました。
そして、本展ではタイトルにもなっている「Dual Dialogue」を主題として、コロナ禍での外出自粛期間が契機となり、自分自身との対話、そして過去の日本文化を見直す過程から導かれた要素のペアリングによって成立する新たなフォームを、絵画作品「Duality Painting」シリーズとして、継続的に取り組んできた絵画表現の延長線上に取り入れることに挑戦しています。
Duality Paintingについて、舘鼻は以下のような解説を寄せています。
人における抱擁という行為がふたつの存在をひとつのものに変えることと同じように、「生と死」、「天と地」、「男と女」などの象徴的な異なる要素の親和性を探り、画面上で再構成することで、習合主義(syncretism)を形式的に表現している。
日本には過去に、神祇信仰と仏教信仰が離合集散を繰り返した上に融合した、「神仏習合」と呼ばれる現象があった。神仏習合では、6世紀半ばの仏教伝来以降、百済から渡ったその教義が日本独自に発展を遂げた理由ともなっており、神祇信仰においても依り代として古くから崇敬されてきた「鏡・玉・剣」などに加えて、神像の制作が為されるようになったことの要因とも考えられる。また、神宮寺や神願寺などのように、神仏習合における融合を形式化し体現したものが8世紀頃より、中央から地方へと広がりを見せていった。その後、明治維新の神仏分離令(1868年)によって古代から続いた神仏習合は禁じられることとなり、民衆による廃仏毀釈運動へと発展した。時を同じくして、鎖国を解き開国という政策を選択した日本は、外国文明の流入を許したことで近代化し、現代日本の姿があると考えるが、そのことからも習合主義の概念は、日本のなかで継承される他国には見ることのない価値観とも言うことができる。
一見すると矛盾している、あるいは対立するものを融合させることにより、新たな意味そして解釈が生まれていく。舘鼻が言うように、それは日本の歴史において、私たちが意識する以上に自然に行われてきたものです。また、異なる要素を並列することで新しい光をあて、よく知られていなかった部分を発見するというアプローチは、美術、そして学術研究においても使用されてきました。このような思考は、価値の転換が求められる現在、より重要になっていると言えます。
日本の歴史、そのなかで育まれてきた独特の美学、文化や思想という豊かな資源を再考することで、新たな視点を見出し、未来への可能性を示す。この舘鼻の創作のプロセスは、コロナ禍をきっかけにより深化しています。本展では新作の平面作品を中心に展示いたします。この機会に是非ご高覧ください。
展覧会概要
展覧会名
舘鼻則孝「Dual Dialogue」
展覧会会期
2020年9月5日(土) - 10月10日(土)
開廊時間
11:00 - 18:00(火・水・木・土)
11:00 - 20:00(金)
日・月・祝は休廊
会場
KOSAKU KANECHIKA
〒140-0002
東京都品川区東品川1-33-10
TERRADA Art Complex 5F
03-6712-3346
kosakukanechika.com
入場無料
舘鼻則孝(たてはな のりたか)
1985年東京生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で、幼少期から手でものをつくることを覚える。2010年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。「イメージメーカー展」(21_21 DESIGN SIGHT、2014)、「Future Beauty」(東京都現代美術館 ほか国際巡回、2012)、個展「呪力の美学」(岡本太郎記念館、2016)、個展「It's always the others who die」(POLA Museum Annex、2019)、個展「NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty」(ポートランド日本庭園、2019)等の他、ニューヨーク、パリ、 オランダなど世界各地で作品を発表。また2016年3月にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催するなど、幅広い活動を展開している。作品はメトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵されている。現在、パナソニック汐留美術館で開催のグループ展「和巧絶佳」に出展中(9月22日まで)。
WORKS
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