展覧会名
⽔上愛美 「Dear All Our Yesterdays」
展覧会会期
2025年5月10日(土) – 6月21日(土)
オープニングレセプション
2025年5月10日(土) 17:00 – 19:00
開廊時間
11:00 – 19:00
日・月・祝は休廊
会場
KOSAKU KANECHIKA
〒104-0031
東京都中央区京橋1-7-1
TODA BUILDING 3F
03-3528-6720
kosakukanechika.com
入場無料
KOSAKU KANECHIKAでは、5月10日から6月21日まで京橋にて、水上愛美展「Dear All Our Yesterdays」を開催いたします。
水上愛美は、時間的な行為の集積であるオブジェクトとして絵画を制作しています。古今東⻄の神話や伝承、歴史上の寓話や悲劇から引用したイメージをキャンバス上に出現させては、砂が混ざった顔料で塗りつぶし、その上から新たなイメージを描くことを繰り返します。そうした取り組みにより生まれる複層的な絵画は、鑑賞者に静止していると仮定されたイメージを網膜で享受する体験を与えるのではなく、人間の未知の領域に対する時間や、現実と仮想など様々な想像力を喚起させます。
本展に際し、水上は以下のステートメントを寄せています。
喪失と生成が目まぐるしく繰り返されるこの世界で、今日もまた昨日となっていく。
千年前に詠まれた作者不詳の短歌にも新鮮に感動し、共感することがあり、そこから今日に至るまでの永い年月を思ったりする。
私は絵画上で、神話や文学、寓話、図式など、他者が遺してきた物語的断片を組み合わせ、私自身が獲得した小さな実感(心地よい線を引くときの腕の角度と速さだとか、適切な絵具の粘度、茶色と群青を混ぜて得られる深い暗色が好きだとか)により、他者の遺した痕跡を現代に生きる個人としての私を通して図像として再生成する。
そうして画面上に現れた図像をときに塗りつぶし、その上にまた新たな図像を描く。表層からは不可視となった図像も絵画の内部に静かに残り続け、視覚的に消えたかに見える1ミリにも満たない薄いその微細な凹凸は、静止した絵画表面の奥に潜むささやかな震えとして確かに存在し続ける。
喪失(不可視)と生成(可視)という相反する運動の間に立ちつつ、そのいずれにも一義的に回収されることなく、絵画という行為を通して両者を接続する試みを続けている。
水上が描き、そして塗りつぶすことで不可視にするのは、さまざまな時代、地域で紡がれる人間の大小の物語です。それは喪失や人生の不条理、不可思議に人間がどう折り合いをつけ「和解」してきたかを伝えるものでもあると水上は言います。いつの時代も、人間は運命に翻弄されつつ、それに対し——ささやかながらも、あるいは時には大きな——創造性を発揮してきました。おびただしい数の物語は、時間の淘汰によってやがて文化的アーカイブから脱落し、不可視の領域へと移行してしまうかもしれません。水上は、それらがたとえ残らずとも、表象として一度は世界に現れたことに美しさを見出し、絵画へと昇華しています。本展では、水上の新作ペインティングを約17点展示します。この機会にぜひご覧ください。