EXHIBITION

鈴木親

「晴れた日、東京」

2018/4/21 Sat - 6/2 Sat

KOSAKU KANECHIKAでは、4月21日より、鈴木親展「晴れた日、東京」を開催いたします。
鈴木親は、「Purple」、「i-D」、「DAZED & CONFUSED」、「LIBERTINE/DUNE」等の国内外の雑誌をはじめ、ISSEY MIYAKE、United Bamboo、TOGA等のワールドキャンペーン・ヴィジュアルなどを手がけ、日本を代表するフォトグラファーの一人として、90年代より常にエディトリアルやファッション・フォトの最前線で活躍してきました。編集者の林文浩は、「Tokyolife: Art and Design」(Rizzoli、2008年)の序文で以下のように述べています。

 

鈴木親は、今の日本では数少ない純粋な意味でのファッション・フォトグラファーであり、世界に通用するオリジナリティーを持ち合わせている。彼のファッション写真は、マルタン・マルジェラに代表されるアントワープ系の内向的なデカダンスの影響を色濃く受けながらも、日本の伝統的な文化の品と静謐さを感じさせる。そこには日本人しか表現する事の出来ない情緒がある。彼は、ファッション写真家であることにこだわり、ファッション写真と作品以外は、ほとんど撮影しない。商業主義一辺倒の今、鈴木親の隠者のような撮影のスタイルは、彼のオリジナリティーを磨き上げた。その独特の色彩と間を感じさせる作風は、世界に影響を与えるファッション写真家になることを予感させるに十分である。
(Fumihiro Hayashi, “Art and Fashion Photography”, Tokyolife: Art and Design, Rizzoli, 2008)

 

デジタルが普及し、技術的な方法論は飽和状態にあると言える写真というメディウムにおいて、オリジナリティを保ち続けるのは容易ではありません。事実、鈴木のスタイルをコピーしたような写真はよく見られます。そのなかで独自の作風で作家としての評価を確立してきたのは、鈴木が国内外での豊富な経験から、世界で活躍するトップ・フォトグラファーたちがどのように作品を「オリジナル」として成立させているかや、写真をとりまく様々な構造について意識的に観察する視点、また撮影現場全体をマネージしつくりあげる技量を獲得しながら、自身の制作や好奇心、時代や文化と真摯に向き合ってきたからだと言えるでしょう。
その鈴木の原点に、現代アート、特に社会との関わり、哲学や歴史への視点を重要視したヨーゼフ・ボイスへの関心があったのは不思議ではありません。展覧会のカタログでスウェーデン人作家のアンダース・エドストロームが制作したマルタン・マルジェラのドキュメンタリーを見て感銘を受けた鈴木は、彼に会うために渡仏。紹介された「Purple」誌で、初めての仕事が表紙になります。パリに一年間滞在した後、帰国し、東京を拠点にしながらも国際的な活動をしています。
世界中のクリエイターを魅了する東京という街、著名人、有名メゾンから若手のモデルまで、鈴木が撮る対象はその有名な、パブリックなイメージとは別の、新鮮でありその対象が一瞬だけみせる奥の部分を、直感的に引き出しているように思えます。それは鈴木が、対象だけに焦点をあわせるのではなく、対象とカメラの間にある空間自体をとらえているからかもしれません。対象はその空間のなかで、常に変化するものの一部として自然に存在しています。本展では、約30点の作品を展示します。

 



展覧会について

本展では、鈴木のこれまでの作品群から花、東京の風景、ポートレイト等、約30点をセレクトして展示します。ディレクションのもとに撮影した写真とスナップを取り混ぜ、また未発表の作品も展示される本展は、彼の思考の過程や、その眼差しの広がりを感じさせる空間となります。全てフィルムで撮影され、特にテーマを設定せずに選ばれ、集められた写真。技術やコンセプトだけではない、偶然性という要素——デジタルのように加工や修正ができないフィルムで撮影されたからこそ可能な、そこに居たから撮れた、という濃密な瞬間の重なり、そしてある種の不思議なエネルギーの充溢から、豊かなナラティブが立ち現れます。
ポジフィルムの使用や日付の入った写真と並んで、鈴木の特徴的なテクニックは、ハーフカメラを使用してシャープさを削ぎ落とし、また複数のコマで構成される写真です。鈴木はデジタルカメラの普及をきっかけに、フィルムの制限の中で何が自由かを考え、また性能が悪いと考えられていたハーフカメラの不自由さを、逆に魅力にする制作を始めました。また日本、特に東京の街を表現するのに最適な、湿気を含むような質感の表現も、ポジフィルムだからこそ可能であり、デジタルがあるからこそ発見したと鈴木は言います。移りゆく時間をシンプルに切り取っただけなのに胸に深く残るような美しさ、独特の写真の世界。これまでエディトリアルでの発表が主だった鈴木の制作の多様な側面を、展示空間で存分に味わえるまたとない機会です。是非ご高覧下さい。

 



展覧会概要

展覧会名
鈴木親「晴れた日、東京」

展覧会会期
2018年4月21日(土) - 6月2日(土)
4月21日(土) 18:00 - 20:00 オープニングレセプション

開廊時間
11:00 - 18:00(火・水・木・土)
11:00 - 20:00(金)
日・月・祝は休廊

会場
KOSAKU KANECHIKA
〒140-0002
東京都品川区東品川1-33-10
TERRADA Art Complex 5F
03-6712-3346
kosakukanechika.com

入場無料




鈴木親(すずき ちかし)

1972年千葉県生まれ。1998年渡仏。雑誌「Purple」にて写真家としてのキャリアをスタート。
「Purple」(フランス)、「Libertine/DUNE」(日本)、「i-D」(イギリス)、「DAZED&CONFUSED」(イギリス)、「CODE」(オランダ)、「Hobo」(カナダ)、「IANN」(韓国)、「honeyee.com」(日本)、「commons&sense」(日本)等の国内外の雑誌から、ISSEY MIYAKE、TOGA、Y’s等のコマーシャル、GUCCI、FACETASM等のムービー制作、ビョークの「Biophilia」、よしもとばなな著「どんぐり姉妹」(2011年、新潮社)での撮り下ろし等、活動は多岐にわたる。
主な個展をtreesaresospecial(2005年、東京)、G/P gallery(2009年、東京)で開催、また主なグループ展をcolette(1998年、パリ)、LA MOCA(1998年、ロサンゼルス)、Henry Art Gallery(2001年、ワシントン、アメリカ)で開催している。
代表的な作品集に「shapes of blooming」(2005年、treesaresospecial)、「Driving with Rinko Kikuchi」(2008年、THE international)、「Lumen #06 鈴木親 (Chikashi Suzuki) : CITE 」(2009年、アートビートパブリッシャーズ/ G/P gallery)、「SAKURA!」(2014年、little more)等がある。

WORKS

  • Shibuya, Tokyo, 2011

  • Meguro, Tokyo, 2005

  • Chiba, Chiba, 2005

  • Nishi-Azabu, Tokyo, 2012

  • Shibuya, Tokyo, 2018

  • Omotesando, Tokyo / Susan Cianciolo, 1998

  • Meguro, Tokyo, 2010

  • Meguro, Tokyo, 2011

  • Harajuku, Tokyo, 2014

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